コロナ前の年末、僕の心はいつもパリに飛んでいた。
クリスマスのイルミネーションが美しく輝くシャンゼリゼ通り、
街角で香るバターたっぷりのクロワッサン、
セーヌ川沿いを歩くあの特別な時間。
今となっては、円安や忙しさに阻まれ、
現実のパリ旅行は夢のまた夢。
でも、妄想の中では、いつでもパリへ行ける。
渋谷の朝。
散らかったゴミと雑然とした雰囲気が、
なぜだかパリの裏通りを思い出させる。
そんな中、ヴィロンの真っ赤なソファーに腰掛けていただく朝食は、
まさにパリそのもの。
バゲットにたっぷりのバターとジャムをのせて、
一口頬張ると、心がふっと軽くなる。
Amazonで、”アメリ”を再生。
モンマルトルの街並みや小さなカフェが映るたびに、
パリの空気を感じる。
ネットフリックスでは、”LUPIN”を観ながら
パリの街が出てくると、つい「ここ行ったことある!」と
ひとりごとを漏らす。
夜になると、ビストロ気分で
パテ・ド・カンパーニュをつまみながら、
ヴァンナチュールを楽しむ。
口に広がる優しい酸味と深い味わいに、
心はまたセーヌ川沿いへと飛んでいく。
表参道のネオンのきらめきは、どこかシャンゼリゼ通りを思わせて、
通りを歩くたびに「ここも小さなパリかも」と思う自分がいる。
駒沢公園の銀杏並木を歩くと、
黄色い絨毯のような景色が広がり、
ふとパリのリュクサンブール公園を思い出す。
あの整然とした並木道や、秋の澄んだ空気に包まれた庭園の静けさ。
大好き。
そして東京タワー。
そのシルエットを見つめると、
自然とエッフェル塔を思い出す。
エッフェル塔の上から見たパリの街並みやが、静かに蘇ってくる。
でも、やっぱり。
いつかまた本当のパリの風を感じたい。
セーヌ川のほとりで立ち止まり、
街の喧騒に耳を傾けながら、深呼吸をしたい。
その日が来るまで、
この妄想旅行を楽しみ続けよう。
それが僕の日常に、
パリを忘れさせない方法だから。